奈良山友会 山行の記録

大峯奥駈
弥山から釈迦ケ岳へ

 2003年10月25日・26日


釈迦ケ岳から七面山

 <メンバー>
L.ハッピーエンド porori のんぶー

<コース・コースタイム>
<10月25日> トンネル西口9:00−奥駈堂出合9:50−弁天の森10:20−聖宝宿跡10:45−11:45弥山小屋12:45−
八経ケ岳13:10−明星ケ岳13:35−禅師の森−舟のタワ15:00−揚子ケ宿小屋15:45

<10月26日> 揚子ケ宿小屋6:05−仏生岳7:00−孔雀覗7:40−椽の鼻8:40−釈迦ケ岳8:55−深仙の宿9:45−
10:05 大日岳10:30−太古の辻10:40−二つ岩11:15−12:05小仲坊12:30−車止め12:45

以前から奥駈の話を聞くたびにその古道に憧れていた私。
女人禁制が故に完全な縦走は無理ながら、今回は奥駈の中でも最も原始の姿を留めている核心部を歩く ことができた。

【 1日目 】
今回参加するにあたり奥駈に詳しい友達に尋ねてみたところ「そのコースは素晴らしいで!いわば奥駈のハイライトや。行っといで〜!」と。
その言葉 に励まされ参加を決意。大峯道は厳密には参詣道というより、山伏が奥駈という修行をするための山岳ルート。
山伏のように心身を鍛練し、超自然的な神仏の力 (験力)を取得するために修行するなんてことは私には無理なので・・・
とにかく元気に最後まで歩き通すことが目標!

近鉄下市口駅に行くとすでに天川タクシーが待ってくれていた。
メンバーが全員揃ったところで縦走の出発点、弥山の登山口へと向かう。運転手さんの話による と山の紅葉のピークは一週間前だったのこと。
残念・・・!それでも川迫谷のあたりの紅葉は美しかったし、空は青く清々しいので縦走の期待が脹らんで来る。

トンネル西口から登り、約1時間足らずで出合いに出る。ここは吉野からの大峯奥駈道と合流する所。
しばらくは緩やかな起伏が続く歩きやすい道となり、弁天 の森あたりからは美しいブナ林が続く。やがて、聖宝宿跡に到着。
ここには聖宝理源大師の銅像がある。理源大師は大峯修験道中興の祖であり、私の住む黒滝村 にもとても由縁の深い人物だ。
鳳閣寺というお寺は理源大師が建立したと言われていて石の廟塔もある。
また大師による大蛇退治の伝説もあり興味深い。
さて、 この理源大師の像に触れると雨が降ると言う伝説があるらしいが触れるも何も・・・
私は今までに雨のときにしか来たことがないのだから、今までに真実のほど を試す術がなかった。
いつもより理源大師の顔をじっくり見てしまう私。まずここで今回の縦走の安全を祈る。

ひと息を入れた後、聖宝八丁と言われる急坂を登っていると、足元の窪みに白いものがいくつも積もっている。
今朝の寒さで降りた霜?雪?「さすが天川村 や〜!」と踏みしめながら登りつめると見慣れた弥山小屋が見えた。

ここで昼食。荷物軽減のため持って来なかった水を小屋で買う。2リットルで200円だった。
山頂の天河弁財天奥宮で縦走の安全祈願をし、
国見八方睨か らくっきりと見える大普賢岳や台高山脈を見て大満足した後、八経ケ岳をめざす。


大台・台高山脈

鞍部から登り返すあたりからが天女花と言われるオオヤマレンゲが自生してい る所である。
当然今の時季、木は丸裸。毎年のようにこの場所に来ていながらこんなんではこの木がオオヤマレンゲだとわからない。情けないね・・・。

鹿からオオヤマレンゲの花を守る鉄柵の扉を何度かくぐり、
シラビソの立ち枯れの中を登り切ると近畿の最高峰、八経ケ岳(八剣山・仏教ケ岳)の山頂だ。
ここか らは360度遮るものがないのと今日の好天で絶好の展望!
遠くに春に歩いたダイトレのコースも見える。大台あたりもよく見える。
それよりも何より、山上ケ 岳から明日めざす釈迦ケ岳までの奥駈道の主要部全部を見渡していると思うと気持ちはますます晴れマーク!

ゆっくり展望を楽しでいたいが先を急がなければ・・・!八経ケ岳を下ってからは倒木がた くさんあり、
尾根にはトウヒやダケカンバの立ち枯れの森が続く。30分ほど歩いたあたりの左側が明星ケ岳のようだ。
西側を巻き穏やかな尾根をしばらく行くと広い所に出た。禅師の森?


八経を過ぎると誰一人会いませんでした

仙宿跡、五仙宿跡を過ぎるあたりからまわりにシダが多くなって来たと思ったら窪地の所が舟ノタワ。
ここには案内板があったので確かだ。しばらく進むと右手 にまだ紅葉の残っている七面山がはっきり見える。
キャンプをするにもちょうどいいような広い場所なのだがとにかく今日の吹き抜ける風のとても冷たいことと 言ったら・・・!
今日はここでのテント泊じゃなくてよかった。

七面山を眺めながら進んだ後、斜面を下ると今晩泊まる揚子ケ小屋が見えた。思っていたよりも立派だったしきれいだったのでありがたい。
写真を撮りに来たと いう先客が表で焚き火をしていた。その人はとても話好きだったので楽しいひと時を共に過ごすことができてよかった。
でも、できればあの大きないびきがな かったらもっとよかったかな・・・。


楊子ケ宿

【 2日目 】

5時に起床。朝食の後、まだ眠い体に喝を入れながら最初の仏生ケ岳をめざす。
まだ夜が明け切れぬ楊枝ノ森はあたり一面ガスに包まれていてとても幻想的だ。
左手に開けている空が明るく、今日も天気の良いことを予感させる。そう思うと歩くのに張りが出て来る。
このあたりからは倒木も岩もしっとりとした緑色の苔 に埋もれていた。全体が一枚の額縁のようでとても美しい。

仏生岳を西に巻ながら歩く。歩いているときには分からなかった全容が通り過ぎた後振り 返って見た時よく分かった。
歩いている道はまだ山の陰だが、それでも 右手の方から段々と空が明るくなって来た。
最初は遥か向こうの谷にスポットライトのように当っていた太陽の光が段々と帯状に広がって行き、
やがて空全体が 明るくなったと思った頃、釈迦ケ岳が前方から突如現れた。
辿り着くべき所がはっきりわかって嬉しかった。

孔雀岳の西を通り過ぎる直前にある孔雀覗をする。あまり期待していなかったのだが左手に上がったと同時に一面に広がった景色にビックリ!
絶壁の上、風がと ても強い。吹き上げる風に飛ばされないように、いや、引きずり込まれないように慎重に覗き込む。
深くて広い谷全体にはまだ紅葉が残っていて美しい。そして よく見ると白く飛び出しているたくさんの岩は五百羅漢だった。
ずっと見ていたいのだが風が強くてそうもいかない。

 小さな連続する岩場の行場を登ったり下ったり回りながら進む。前方にはいつも大きく美しい釈迦ケ岳が見えている。
両手を広げるように私たちを迎えてくれて いる。美しい!さすが大峯随一の美峰だ。早くあそこに行きたいという気持ちに駆られる。

釈迦ケ岳山頂をめざすため最後の坂を登る。ここを登りきるとあの釈迦如来像が待ってくれている。そう思うとなんだか気が急いて来る。
一気に登り山頂に着く と、想像していた通り釈迦如来像が立っていた。今日の暖かい日差しを浴びながら、穏やかに・・・。
その昔、里に住む強力の大男がこの銅像の上半身と下半身 の二つに分けて(三つという説もあり)担いで登って来たと聞くが、
いくら強力と言えども深い信仰があればこそや、と像を見上げる。

釈迦ケ岳山頂


しばし休憩しながら安堵感に浸ってしまう。それからゆっくり展望を楽しむが素晴らしいの一言に尽きる!
まず自分たちが歩いて来たルートを辿る。
遥か向こう に見える弥山や八経からのここまでの尾根づたいのルートを実際に確認すると感激も一入。
また七面山の南壁も素晴らしい。まさにそそり立っているという感じ で大峰山系最大の岩壁というだけある。
あのアケボノ平からこの釈迦ケ岳がドーン!と大きく見えるんやね。
何度もぐるぐると360度の大パノラマを堪能す る。
私たちが山頂に着いたときは誰もいなかったのに登山者が後から次々に登って来る。今日は絶好の登山日和やからね!

暖かい山頂で充分に休憩した後、最終地の前鬼をめざして降りる
。途中でもたくさんの登山者とすれ違う。急な斜面を降りたら深仙宿だ。
他の登山者から水場を 尋ねられたがわからないと返答しているとお堂から出て来た人が100mほど先にあると教えてくれた。

深仙宿から登り聖天の森を過ぎた後、鞍部に出ると目の前にこんもりとした大日岳の岩峰が現れた。
分岐の所にザックを置いて登ることにする。急な岩場だが空 身なので楽ちんや。
いつからか岩盤が風化により落剥し危険なので鎖での登りが廃止になっていた。
以前の鎖は錆び付いたまま残っているものの反対側を巻いて 登るようにテープが付いている。
山頂には10分で到着しそこの祀られている大日如来像を拝む。
端っこの危なっかしい岩場から釈迦ケ岳と対峙していると高度 感もあり、またここからも釈迦ケ岳の大きさと美しさを再認識する。


太古の辻

大日岳からしばらく行くと太古の辻(堂の森)の分岐。
まっすぐそのまま行くと玉置山の方に行く。私たちのめざす前鬼はここから左に折れて下る道だ。
背の低 いイトザサから背の高いクマザサに変わったと思ったら突如木の階段が始まった。
比較的まだ新しい階段のようだが段差が広かったり狭かったりして歩幅が合わ ないとなかなか歩きにくい。
確かにこれを登るよりはましだがしばらく続きうんざりした。その木の階段にも充分に飽きた頃、二つ岩(両童子岩)に出た。
切り 立った二つの巨岩でセイタカ童子岩とコンガラ童子岩だ。この名前の2匹の鬼が岩に変わったという伝説があるとか。
その岩の間をくぐると目の前にぱっと景色 が広がった。向こうにさっき孔雀覗きから見ていた五百羅漢岩も見える。
白い岩肌と紅葉とのコントラストが美しい。


原生林の中

長かった木の階段もやっと終わると白く大きな岩がゴロゴロしている涸れ沢を通る。ここが白谷だな。疲れた足で転ばないように下りて行く。
しばらく行くと右 手に緑の森が広がって来た。静かな森だ。ずっと下って来た後だけに平坦で歩きやすい。
足元にはたくさんのトチの葉っぱや空っぽの実の殻が落ちていた。

ちょっと森の匂いが変わってきたなと思ったら杉林になって来た。
昼間なのに薄暗い林の中にかつての宿坊跡の石垣が残っており、その先の明るく開けた土地に 小仲坊が見えた。

ここまで来たら今回の縦走も終わりに近い。
宿坊横の日当たりのいい場所に腰かけていると日差しがとても暖かく疲れた体をほぐしてくれ、
ここまで無事に辿り 着けてよかったという安堵感が溢れて来る。

1,300 年前の昔、役の行者が自分に仕えていた鬼の子孫である前鬼・後鬼夫婦にこの地に住みついて修行者を助けるようにと遺言したと言う。
その末裔である五家(五 鬼助(小仲坊)・五鬼継(森本坊)・五鬼上(中の坊)・五鬼童(不動坊)・五鬼熊(行者坊))のうち、
現在残っているのは五鬼助(小仲坊)だけだ。
そんなこ とを考えていると、偶然にもお顔だけはよく知っている五鬼助義之さんが出て来られ私たちに話しかけてくれた。

元気を取り戻し、最終地のタクシーが迎えに来てくれる車止めゲートへ向かう。
早めに小仲坊を出たと言えど、なんと約束の時間より1時間半以上も早く着いて しまった。
途中まで歩き迎えのタクシーに乗った私たちは不動七重の滝を楽しんだ後、上北山村薬師の湯へ。

行く前は「懺悔懺悔、六根清浄」という言葉の意味を考えながら歩こうなんて思っていた が、途中すっかり忘れてしまっていた。
またいつか、聖なる山たちに浄 化されていることを実感しながら癒されたいがために癒される奥駈をできる時がくるのだろうか。
しかし、今の私は歩くことだけに没頭したと実感できただけで 充分すぎる二日間であった。


文:のんぶー  写真:porori