奈良山友会 山行の記録

西穂独標は待っていた

2003年2月7日〜9日


ロープウェイの西穂口展望台から笠をバックに

<メンバー>
L.山の家
山遊亭軟弱、山歩、Mt.冨士、ナカノオオエ


今回の山行は、私以外の4人の方々にとっては、今年1月10日〜13日上高地から西穂独標を目指し、
あまりに激しいラッセルに、西穂山荘までしか達することが出来ず、他日を期したリベンジ登山であった。
4人の方々が、予期せぬラッセルにへとへとになる様子は、
奈良山友会のホームページに『北アルプス 西穂山荘』として愉快に報告されており、興味深い。

そこで、今回の計画は、新穂高温泉からロープウェイを利用して西穂高口駅まで行き、そこから登山を開始すると云うものであった。
そのお陰で、私のような非力なものでも、参加することが出来たのである。
 
2月7日夜8時、近鉄平端駅前に集合した一行5人は、山の家さんの車で名阪道、東海北陸道を経て、
深夜の1時半ごろ新穂高温泉の駐車場に到着し、テントを設営した。

駐車場では、多分スキー客が多いと思われるが、何台かの車がエンジンを掛けっぱなしにして暖を取っており、
あちこちで談笑の声が聞こえ、オレンジ色に照らす照明灯のせいもあって、明日の楽しみに期待を寄せる、明るく華やいだ雰囲気があった。
我々も小宴会で少し盛り上がったが、明日のことを思い午前2時半ごろ就寝した。

8日朝6時過ぎに起床、リーダーが聞いて来たところでは、ロープウェイ始発は8時半とのことだったので、ゆっくりと朝食。
7時半ごろ駅舎の前に行くと、まだ入り口の扉が閉まっていたが、もう何人か並んでいた。
やがてツアーの団体客が来たので、時間を早めて運行することにしたらしく、扉が開き、我々も8:15頃にはロープウェイに乗った。

ロープウェイを乗り継ぎ西穂高口駅に到着。早速、屋上の展望台で快晴のもと素晴らしい展望を嘆賞した。
谷を挟んで笠ケ岳の美しい形が目の前に見え、抜戸岳、弓折岳から西鎌尾根にかけての稜線が、真っ白に輝いて見事であった。
南の方は焼岳や、霞沢岳が目前に迫り、西の方は白山が信じられない程近くに見えた。
我々は展望を充分に楽しんだ後、厳冬期の冬山完全装備の出で立ちで、9:10西穂口を出発した。

駅舎の周辺は一般の観光客が多く、我々が大きなザックにワカンやスコップを括り付けて担いで行くのを、好奇の目で見ていた。
西穂口から西穂山荘までは、約200メートルの高度差しかなく、なだらかな起伏の続く、気持ちの良い樹林帯の中を進んだ。
大きな樹木の枝々が積雪の重みで垂れ下がり、クリスマスツリーの林の中を歩いているようで、すこぶる楽しい。

ロープウェイの西穂口展望台から笠をバックに
雪の登山道は、さすが西穂へのメインルートなので、よく踏み固められており、滅多に壷足になることは無い。
それでも私は皆のペースに着いて行くことが出来ず、時々追い付くのを待ってもらう有様であった。

丁度1時間半で西穂山荘に到着。これは地図に載っている標準タイムである。
ロープウェイの駅舎周辺には、あんなに多くの人がいたのに、山荘の周辺には、我々の他には殆ど人がいない。
遠くの方に登山中のパーティーが1組か2組見えるだけである。
我々は此処で荷物をデポし、サブザックを持ち、アイゼンを着けて10時55分独標へ向った。
進行方向には、独標から西穂、奥穂にかけて幾つものピークがそそり立ち、壮観な眺めである。

独標にはT字形の標識が立っているのが、遠くから見えるが、行けども行けどもなかなか近づけない。
西穂山荘から独標までは高度差で約350mしかないが、
2,500mぐらいの高さになるとさすがに酸素の薄さが感じられ、平地を歩くような訳には行かない。

それでも他の4人は日頃の鍛え方が違うのか涼しい顔をしている。
先頭は軟弱さん。2番手は私。軟弱さんは時々立ち止まっては待ってくれる。

強風の稜線   雪庇が出来そうな所は少し飛騨側を歩くようロープが張ってある。
稜線上は風が強く、頭巾型の帽子を被っているが、更にヤッケのフードを出して被る。
独標手前の最後の鎖場の急登を攀じると、突然360度の視界が開け、山頂に達した。


強風の稜線

山頂には誰もいなかった。山頂からの景観は、人生にこれ以上の至福の時があろうかと云う思いであった。
遠く富士が甲斐駒の左肩辺りから大きく顔を出しているのが見えた。北側には直ぐ隣にピラミッドピークの鋭い尖塔。
その向こうの西穂、ジャンダルム、ロバの耳の鋭鋒。奥穂から前穂にかけての美しい吊尾根。
谷を挟んで目の前に笠ケ岳。白山が意外に近く見えるのは天気が崩れる前兆か。


槍ヶ岳を望む

不思議なことに、此処まで来る稜線上であれほど強い風が吹いていたのに、今この瞬間ピタリと風が止んでいる。
独標は我々を待ってくれていて、歓迎してくれているのだ。

我々は独標で20分間滞在し、展望を存分に楽しみ、12:35下山を開始した。
山荘から独標まで登りの所要時間は1時間20分であった。標準タイムの1時間30分より10分間少ない。
下りの所要時間は山荘まで50分であった。これも標準タイムより 10分間少ない。
これは、天候が良くラッセルも無ければ、積雪期の方が、無雪期に岩礫帯を、足場を選びながら歩くよりも歩き易いと云うことであろう。

リーダーは当初は山荘前のキャンプ場でテントを張る計画であったが、
夕方から天気が崩れるとの予報であったので、風雪の強い稜線のキャンプ場を避けて、
ロープウェイの西穂高口駅の近くに、適当な場所を見つけてテントを張る方が良いと判断された。

我々はデポした荷物を回収し、西穂口へ向けて13:40再び出発した。途中完全装備の本格的なパーティーに何組か出会った。
彼らは、今日は何処まで行くのだろう。

やがてロープウェイまで5分とかからない樹林の中に、
テントを張るのに誂え向きの空間を見つけることが出来た。
早速5人肩を並べて、雪を踏み固め、充分な広さの設営場所を作り、6人用テントを張った。
このテントを持ってくれたリーダーはさぞ重かったことであろう。本当にご苦労様でした。

ここからはL.山の家さんの独壇場である。
当山友会で、食事担当でこの人の右に出る人はいない。
山行に適した数々の独創的な、創作メニューの蓄積があり、今でも新メニューの研究に余念が無い。
今夜は色々とトッピングを変えた5種類のお好み焼きとのこと。

因みに食材は5人分で重さ7.2kg。

食材の中味は、
  野菜類 ネギ、タマネギ、ニンジン、キャベツ、モヤシ、ピーマン、ジャガイモ
(何れも適当な大きさにスライス又はカットしてある。)
肉魚介類 ブタ肉、エビ、桜エビ、イカ、ホタテ
調味料等 トンカツソース、ウスターソース、マヨネーズ、サラダ油、カツブシ、青ノリ、テンカス、ショウガ、洋カラシ


夕食のお好み焼き シーフード編

なにしろこのテント場へ14:30到着。時間はたっぷりある。
我々5人は1枚1枚焼き上がるのを待って5等分して食し、それぞれ異なった味を5回も楽し んだ。
飲み物はウイスキー、ビール、コーラ等で大いに盛り上がった。

夕方から予報通り雪が降って来たが、稜線上と違ってここは静かに粉雪がキラキラと落ち てくると云う感じであった。
大いに食べ、大いに飲み、大いに談笑してもまだ19:00である。他にする事も無く就寝。

9日 6:00起床。朝食メニューは具だくさんのラーメン。
雪を融かして湯を沸かし、ラーメンを作るのに時間がかかる。しかし今日はロープウェイで降りるだけ なので時間はたっぷりある。

ラーメンの後ゆっくりお茶を飲んでいると、ロープウェイ駅のアナウンスが聞こえて来て、運行開始を知る。
9:00テント場出発。9:10 駅到着、ロープウェイで下降。10:30には新穂高温泉の村営浴場で入浴していた。

11:00駐車場出発、平湯から安房トンネルを抜けて松本へ、長野道、中央道を走り、駒ケ岳SAで休憩。
南アルプスと中央アルプスの景観を堪能し、17:30 頃平端駅前へ無事帰着。18:00過ぎには我が家へ帰り着いていた。
パーティーの4人の皆様。本当にお世話になりました。
運転して下さった3人の皆様。安全運転 有難うございました。
そしてリーダーの山の家様。素晴らしい山行、有難うございました。


文:ナカノオオエ 写真:軟弱